「AIで仕事が減ると聞くけれど、うちの経理や事務の仕事のうち、実際どれが消えて、どれが人に残るのか」——これは、25人規模の建材卸会社の社長からいただいた質問です。同じ問いを、この半年で非エンジニアの経営者・個人事業主・バックオフィス担当の方から何度も聞きました。
漠然と「AIで効率化」と言われても動けません。知りたいのは、自分の会社にある具体的な業務のうち、どれをAIに渡せて、どれが自分たちの手に残るのか、という一覧です。
そこで私たちは、自社の業務シミュレーターに収録した17業種・21職種の現場業務を、1つずつ「Claude(アンソロピック社が提供するAI)でどこまで肩代わりできるか」で分類しました。対象は629業務。結論から言うと、AIに任せにくい残る仕事はわずか5業務(0.8%)で、しかもその5つはすべて人の判断と関係づくりの仕事でした。
この記事では、629業務を実測分類して見えた「消える仕事・残る仕事」の全体像と、あなたの会社がどの業務から着手すると効くのかを、データにもとづいて示します。
注: 数字は代表的なケースの目安です。業務内容・習熟度・会社の規模で変わります。それでも、どの種類の業務から手をつけると効くのかの当たりはつきます。この調査は業種×職種の合計削減時間を出した別レポート業種×職種別 生成AIの業務削減ポテンシャルの姉妹版で、今回は「業務そのもの」に絞って分類しています。
この記事で分かること
- 629業務を分類して見えた「消える仕事・残る仕事」の割合
- どの種類の業務(下書き・点検・要約・集計など)がAIに向くか
- 話すだけで始められる業務と、少し準備が要る業務の内訳
- 削減時間が大きい業務トップ15
- AIに任せにくい「残る5業務」とその共通点
- あなたの会社が何から着手すべきか
ここから先は本論です
調査の方法(1分で理解)
やったことはシンプルです。各業種で実在する職種の代表業務を洗い出し、業務ごとに「Claudeでどこまで肩代わりできるか」を3段階で判定しました。
- 高(適性が高い): 定型的で、判断より作業が中心。効率化率70%で試算
- 中(適性が中くらい): 下地は作れるが人の確認が要る。効率化率50%で試算
- 低(適性が低い): 対面判断や関係づくりが中心。効率化率35%で試算
効率化率とは、その業務にかかっていた時間のうち、何割をAIが肩代わりできるかの目安です。この3段階を629業務すべてに付け、種類ごと・道具ごとに集計しました。
技術用語の1行解説
- Claude Cowork(クロードコワーク): claude.ai の画面で、話すように指示するだけで文書作成や要約ができるAI。詳しくはClaude Cowork とはで解説しています
- Claude Code(クロードコード): 同じ作業を大量に一括処理させたいときに使う、少し準備が要るAI
この記事で覚える言葉はこの2つだけで十分です。
主要な発見
629業務を分類した結果、次のことが分かりました。
- AIに任せにくい「低」判定は629業務中わずか5業務(0.8%)。裏を返せば、99%の定型業務には何らかの入口がある
- 適性「高」は302業務(48%)。判断より作業が中心の仕事の約半分は、AIが主役を担える
- 業務の種類で最も多かったのは「下書き・素案づくり」で176業務。次いで点検・チェック80業務、要約・議事録62業務
- 道具の内訳は、話すだけのCowork系と両対応を合わせて354業務(56%)。半分以上は特別な準備なしに始められる
- 削減時間が大きい業務は、請求書作成・掲載文の量産・照合など、毎月くり返す一括作業に集中していた
順に見ていきます。
消える仕事・残る仕事の割合
まず全体像です。629業務のAI適性は次の通りでした。
| AI適性 | 業務数 | 割合 | 意味 |
|---|---|---|---|
| 高 | 302 | 48% | AIが主役を担える |
| 中 | 322 | 51% | 下地をAIが作り、人が仕上げる |
| 低 | 5 | 0.8% | 人の判断・関係づくりが中心 |
注目すべきは「低」がわずか5業務だという点です。世間では「AIで仕事がなくなる」と語られがちですが、実データで見ると、消えるかどうかの二択ではありません。大半の業務は、人とAIが仕事を分け合う「中」に入ります。人が全部やるのでも、AIが全部やるのでもなく、下書きや点検をAIに任せ、最終判断を人が持つ。これが現実的な姿です。
どの種類の業務がAIに向くか
629業務を種類ごとに分けると、AIに向く仕事の輪郭がはっきりします。
| 業務の種類 | 業務数 | 平均効率化率 |
|---|---|---|
| 下書き・素案づくり | 176 | 59% |
| 点検・チェック | 80 | 58% |
| 要約・議事録 | 62 | 62% |
| 集計・データ整理 | 61 | 63% |
| 顧客・問い合わせ対応 | 25 | 60% |
| 企画・発想 | 17 | 56% |
| 調査・下調べ | 10 | 54% |
(残りはこれらに当てはまらない個別業務です)
下書き・素案づくりが176業務と、飛び抜けて多いのが分かります。契約書のたたき台、募集要項、提案書の骨子、SNS投稿、月次レター——ゼロから文章を起こす仕事は、業種や職種を問わずAIの得意分野です。ここに点検・チェック80業務、要約・議事録62業務を足すと318業務、全体の半分になります。文章を作る・直す・まとめるという書類仕事が、非エンジニアの現場でAIが最初に効く領域だと言えます。
効率化率が最も高かったのは集計・データ整理(63%)と要約・議事録(62%)でした。決まった形の入力を決まった形の出力に変える作業ほど、AIの肩代わり度が上がります。
話すだけの仕事・準備が要る仕事
次に、どの道具で処理できるかで分けてみます。
| 使う道具 | 業務数 | 割合 | 平均効率化率 |
|---|---|---|---|
| Claude Code(一括・繰り返し処理) | 275 | 44% | 63% |
| Claude Cowork(話すだけ) | 268 | 43% | 57% |
| 両方 | 86 | 14% | 56% |
話すだけで始められるCowork系と両対応を合わせると354業務、56%になります。半分以上は、特別な設定なしにclaude.aiの画面で今日から試せる仕事です。まず1件、この中から選んで体感するのがおすすめです。
一方、Claude Code(一括・繰り返し処理)に分類した275業務は、請求書の大量作成や掲載文の量産のように、同じ処理を何十件もまとめてやる作業です。効率化率は63%と最も高い反面、最初に少しだけ段取りの設定が要ります。ここは自己流で悩むより、初期設定だけ手伝ってもらうと一気に進みます。非エンジニアが最初から全部を自力でやる必要はありません。
削減時間が大きい業務トップ15
1業務あたりの月間削減時間が大きかった業務を並べると、傾向がはっきりします。
| 業務 | 職種 | 月間削減の目安 |
|---|---|---|
| ポータル掲載文の一括作成 | 一般事務 | 約5時間 |
| 施工写真の整理と報告書化 | 一般事務 | 約5時間 |
| EC商品説明文の一括作成 | マーケティング | 約5時間 |
| モール別売上・入金の照合 | 経理・財務 | 約5時間 |
| 運賃表ベースの請求書作成 | 経理・財務 | 約5時間 |
| 介護報酬請求の事前点検 | 経理・財務 | 約5時間 |
| 月次試算表のチェックと講評作成 | 税理士 | 約5時間 |
| 派遣先別の月次請求書作成 | 経理・財務 | 約5時間 |
| 広告コピー案の一括量産 | 営業 | 約5時間 |
| 広告コピーのABパターン量産 | 制作・クリエイティブ | 約5時間 |
| 募集文書のコンプラ点検 | 法務 | 約5時間 |
| ポータル掲載文の量産 | 営業 | 約4時間 |
| 家賃入金の消込と未入金抽出 | 経理・財務 | 約4時間 |
| ポータル掲載文の量産整形 | マーケティング | 約4時間 |
| ポータル掲載文の一括生成 | 経営者・役員 | 約4時間 |
上位は、請求書作成・入金照合・掲載文の量産・報告書化など、毎月くり返す一括作業に集中しています。1件あたりの手間は小さくても、件数が多く毎月発生するので、積み上げると月4〜5時間になります。経理・財務が7業務とトップに入っているのは、決まった形の帳票処理が多いからです。経理の具体的な進め方はClaudeで経理業務を変えるにまとめています。
削減時間の大きい業務は、頭を使う難しい仕事ではなく、単純だが件数が多い仕事に偏ります。だからこそ、着手の順番は「難しい仕事」からではなく「毎月くり返す定型作業」から、が正解になります。
AIに任せにくい「残る5業務」の共通点
629業務のうち「低」判定はたった5業務でした。ここに、AI時代に人の価値が残る仕事のヒントがあります。
- 内見スケジュール調整文(不動産の営業)
- 異物・衛生クレームの謝罪文(飲食などの広報・PR)
- 入塾面談トークの台本化(教育のマーケティング)
- 助成金の該当チェックと要件整理(士業の社労士)
- 商談後のフォローと議事まとめ(営業)
共通点は明確です。相手の感情や関係性、その場の空気、責任をともなう判断が中心の仕事だという点です。謝罪、面談での対話、商談後の関係づくり、助成金が使えるかどうかの見極め——これらはAIに下地を作らせることはできても、最後に人が相手と向き合う部分は残ります。
これは悪い話ではありません。むしろ、定型の書類仕事をAIに渡せば、人はこの5業務のような「人にしかできない仕事」に時間を回せます。士業の方の判断業務の残し方は士業事務所のAI導入、営業の関係づくりはClaudeで営業力を上げるでも触れています。
どこから着手すべきか
データから導ける着手の順番は、シンプルです。
- 毎月くり返す定型業務を3つ書き出す(請求書、掲載文、議事録、点検など)
- そのうち1つを、話すだけのClaude Coworkで試す
- 減った時間を分単位で記録する
- 効いた業務を、同僚や他部署に横展開する
削減時間が大きい職種から、ではありません。最初に効くのは、毎月くり返す定型業務が多く、成果物が文章・表・メールで完結する仕事です。1件で時短を体感してから横に広げるほうが、社内に定着します。
自分の業種・職種で具体的に何時間減らせるかは、3ステップの無料シミュレーターで試算できます。試算ページはこちら(/automation)です。料金の全体像を先に知りたい方はClaude Codeの料金を完全解説、チームで導入する段階ならClaude Teamプラン 企業向け完全ガイドも参考にしてください。
まとめ
629業務を実測分類して見えたのは、「AIで仕事が消える」という単純な話ではありませんでした。AIに任せにくい残る仕事はわずか0.8%で、大半の業務は人とAIが分け合う領域に入ります。最初に効くのは、下書き・点検・要約・集計・請求といった、毎月くり返す定型の書類仕事です。そして人には、謝罪や面談や関係づくりといった、判断と感情の仕事が残ります。まず1件、話すだけで片づく業務から試してみてください。
この調査を引用する
ニュースレター・ブログ・社内資料・記事などで自由にご利用ください。データと図表は、出典の表記とリンクを添えていただければ引用・転載できます。引用時は次の表記をそのままお使いください。
出典: Claude Works「生成AIで消える仕事・残る仕事|629業務を実測分類したレポート2026」 https://claudelab.jp/articles/783
数字の集計方法やもとデータについての問い合わせも歓迎します。自社の業種・職種で何時間減らせるかは、業務シミュレーターで個別に試算できます(3ステップ・無料)。試算ページはこちらです。
参考リファレンス
- 姉妹レポート: 業種×職種別 生成AIの業務削減ポテンシャル
- 関連記事: Claude Cowork とは
- 関連記事: Claudeで経理業務を変える
- 関連記事: Claudeで営業力を上げる
- 関連記事: 士業事務所のAI導入
- データ出典: Claude Works 業務シミュレーター(17業種・21職種・629業務、2026年7月時点)


