従業員20人の会社で、Slackが仕事の中心になっているとします。議事録をまとめる、問い合わせの一次回答を書く、先月の経費を集計する。こうした仕事は今、チャンネルで「誰かやっておいて」と流れて、結局いつも同じ人が拾っています。
2026年6月23日、Anthropicが発表したClaude Tagは、この「誰かやっておいて」の宛先にClaudeを加える機能です。Slackのチャンネルで@Claudeと呼びかけるだけで、そこにいる誰もがClaudeに作業を頼めます。頼んだ人はそのまま別の仕事に移り、Claudeがスレッドに成果を返します。
この記事では、Claude Tagで何ができるか、これまでの1対1チャットと何が違うか、管理者がどう導入するか、そして料金と対象プランを、Anthropicの発表文(一次情報)で確認できる事実だけで整理します。
Claude Tagとは何か(1分で理解)
Claude Tagは、チームでClaudeに仕事を任せるための新機能です。まず使えるのはSlackで、Claudeをチームの一員としてワークスペースに招き入れる形をとります。
発表時点で確認できる事実は次のとおりです。
- 2026年6月23日にベータ版の提供が始まった(ベータ版とは、正式版の前にユーザーに使ってもらいながら改良を続ける段階のことです)
- 対象はClaude EnterpriseとClaude Teamの契約者
- 頭脳にはAnthropicの上位モデルOpus 4.8が使われている
- 既存のSlack連携アプリ「Claude in Slack」を置き換える位置づけで、既存利用者には30日以内の移行案内がある
- Anthropicは今後、Slack以外の場所にも広げる方針を示している
操作はチャットと同じです。チャンネルで@Claudeにメッセージを送ると、Claudeは作業をいくつかの段階に分け、管理者から許可されたツールやデータを使って順に片づけ、終わるとスレッドに結果を報告します。
1対1のチャットと何が違うか
Claude Coworkのようなブラウザ版Claudeを使ったことがあれば、頼み方の感覚は近いものです。違いは、チームで使う前提の設計が4つ加わっている点です。
複数人で1つのClaudeを共有します。 チャンネルごとにClaudeは1人で、そこにいる全員とやり取りします。誰かが頼んだ作業の途中経過を別の人が見て、続きを引き継げます。誰がどこまで頼んだかが全員に見えるので、引き継ぎ漏れや属人化を減らせます。
文脈を覚えます。 チャンネルの会話を追いながら仕事の背景を覚えるので、毎回ゼロから説明し直す必要がありません。許可すれば他のチャンネルやデータソースからも学びます。一方で、非公開(プライベート)チャンネルの内容を他の場所で報告することはありません。
自分から動きます。 アンビエント(常時見守り)動作をオンにすると、知っておいたほうがよさそうな情報をClaudeのほうから知らせてくれます。返事が止まったまま放置されたスレッドや、片づいていないタスクも自分で追いかけます。
非同期で進みます。 タスクを渡せば、あなたが別の用事に集中している間にClaudeが作業を進めます。複数のタスクを並行して走らせることもでき、数時間から数日かけてプロジェクトを進める使い方も想定されています。ダイレクトメッセージで個別に頼めば、その人用に設定されたツールを使って非公開で返します。
あなたのチームでは何に使えるか
Anthropicは発表の中で、社内の製品チームが書くコードの65%を社内版のClaude Tagが作っていると説明しています。ただ、この使い方はエンジニアだけのものではなく、製品の数値やデータを追う、サポートのチケットを処理するといった場面でも社内で@Claudeが呼ばれているとのことです。
中小企業のバックオフィスに置き換えると、次のような場面が考えられます。
- 経理担当: 月末の経費精算チャンネルで、@Claudeに先月分の経費を費目別に集計してと頼む。担当者は締め作業の別のタスクに移る
- カスタマーサポート: 問い合わせ対応チャンネルで、この問い合わせの一次回答の下書きを作ってと渡す。返ってきた下書きを人が確認して送る
- マーケティング担当: 週次レポートのチャンネルで、今週の数字をまとめる作業を任せ、会議の直前にスレッドで受け取る
- 管理職: 放置されがちな未回答スレッドをClaudeが追いかけてくれるので、抜け漏れの拾い直しが減る
ポイントは、頼んだ内容と成果がチャンネルに残ることです。個人のブラウザの中で完結する使い方と違い、チームの誰もが同じClaudeの仕事ぶりを見て、頼み方を真似できます。AI活用が一部の詳しい人だけのものにならないというのが、Slackに住まわせる方式の実務上の利点です。
なお、ブラウザ版のClaudeでできること自体を知りたい場合は、Claude Cowork とは|非エンジニアのための「話すだけで仕事が進むAI」入門ガイドが全体像の整理に向いています。
使い始めるまでの管理者4ステップ
導入の主導権は管理者側にあります。発表文で示されているセットアップは次の4段階です。
- Slackワークスペースとペアリングする。ClaudeとSlackを接続します
- ツールへのアクセス権限を設定する。どのチャンネルで、どのツールやデータ(必要ならコードも)につなぐかを決めます
- 月間の支出上限を設定する。組織全体とチャンネル単位でトークン(AIの利用量を数える単位のことです)の消費に上限をかけられます
- 非公開チャンネルでテストする。小さく試してから、対象チャンネルを広げます
利用者側の操作は、チャンネルで@Claudeと呼びかけるだけです。特別な訓練は要りませんが、どのチャンネルでどこまで任せるかの線引きは、導入前にチームで決めておく必要があります。
料金と対象プラン
Claude Tag自体の個別料金は発表文に記載がありません。確認できるのは次の2点です。
- 利用にはClaude TeamまたはClaude Enterpriseの契約が前提
- 対象顧客には利用開始向けのクレジット(試用枠)が発行される
つまり検討の入り口は、チームでTeamプラン以上を契約するかどうかの判断になります。Teamプランの内容と費用感はClaude Teamプラン 企業向け完全ガイド|Pro・Enterpriseとの違いで、個人プランを含めたClaude全体の料金体系はClaude Codeの料金を完全解説|全プラン早見表と実費シミュレーションで詳しく整理しています。
情報の扱いが不安なときに見る3つの設計
チームのSlackにAIを入れると聞いて最初に気になるのは、機密情報の扱いだと思います。発表文で示されているセキュリティ設計は3つあります。
第一に、チャンネル単位のアクセス制御です。管理者が、どのチャンネルでどのツールや情報にアクセスできるかを細かく決められます。用途ごとに別々のClaudeを立てるイメージで、記憶を含めて管理者が決めた範囲の外には出ません。経理チャンネルのClaudeと社外向けチャンネルのClaudeで、見えるものを分けられます。
第二に、非公開チャンネルの扱いです。プライベートチャンネルの内容は、他の場所で報告されない設計です。
第三に、記録と上限です。操作はログとして記録され監査に対応し、トークンの支出上限を組織全体・チャンネル別にかけられます。使いすぎや想定外の動きに、事後ではなく仕組みで歯止めをかけられます。
それでも、どの業務データをAIに見せてよいかは会社ごとの判断です。ここを曖昧にしたまま全チャンネルに展開すると、便利さよりリスクが先に立ちます。非公開チャンネルでのテストから始める公式の手順どおり、小さく試すのが現実的です。
まとめ
Claude Tagは、SlackチャンネルにClaudeを一員として招き、@Claudeと呼ぶだけで誰もが仕事を頼めるようにする機能です。2026年6月23日からTeam・Enterprise契約者向けにベータ提供が始まり、チームでの共有・文脈の記憶・自発的な動き・非同期の作業という4点が1対1チャットとの違いです。管理者はアクセス範囲と支出上限を握ったまま、非公開チャンネルの小さなテストから始められます。
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