生成AIの使い方 コツ|「なんか微妙」を「これは使える」に変える頼み方の技術
冒頭
15人の不動産管理会社で営業事務をしている方がいるとする。先月、話題の生成AI(せいせいエーアイ: 日本語で指示を出すと文章を作ってくれるAI)を使い始めた。物件紹介のメール文を頼んでみたが、返ってきたのは「いかにもAIが書いた」という感じの、どこかよそよそしい文章だった。結局、自分で書き直す羽目になり「これなら最初から自分で書くのと変わらない」と感じた。
この記事は、まさにその段階にいる方のために書いた。生成AIのアカウントは持っている。何度か使ったこともある。でも「本当に仕事が楽になった」という実感がまだない。そんな方に向けて、頼み方を変えるだけで結果が劇的に良くなる10のコツを紹介する。
特別な知識は不要だ。ソフトのインストールも課金も必要ない。今のアカウントのまま、頼み方のパターンを変えるだけでいい。
記事の最後に、10のコツをまとめた「頼み方チートシート」をPDFで無料ダウンロードできる。印刷してデスクの横に貼っておけば、いつでも参照できる。
なぜ同じ生成AIでも、人によって結果が違うのか

生成AIは道具だ。同じハサミでも、まっすぐ切れる人と曲がってしまう人がいるように、同じ生成AIでも使い方で結果が変わる。
ただし、ハサミと決定的に違う点が1つある。生成AIは「何も言われなければ、一般的な答えを返す」という性質がある。つまり、頼み方が曖昧だと、誰にでも当てはまるぼんやりした回答が返ってくる。逆に、具体的に頼めば、あなたの状況にぴったりの答えが出てくる。
結果が「なんか微妙」になる原因の8割は、頼み方にある。AIの性能の問題ではない。
これから紹介する10のコツは、私が200本以上の非エンジニア向け記事を取材・執筆する中で見えてきた「結果が良い人に共通する頼み方」だ。どれも30秒あれば試せる。
コツ1: 自分が何者かを最初に名乗る
生成AIに頼むとき、いきなり「メールの下書きを作って」と書いていないだろうか。これだと、AIはあなたが社長なのか新入社員なのか、どんな業種なのかが分からない。結果として、誰にでも当てはまる無難な文章が返ってくる。
最初の1行で自分の立場を伝えるだけで、回答の質が変わる。
悪い例:
お礼メールを書いて
良い例:
私は20人の設備工事会社で営業をしています。 昨日、初めて訪問した建設会社の購買部長にお礼メールを書きたいです。
「私は〇〇で〇〇をしています」。この1行を加えるだけで、業界の慣習に合った言い回し、適切な敬語の度合い、相手との関係性に応じたトーンが自動的に調整される。
効果: メールの修正回数が平均3回から1回に減る。
コツ2: 完成形のイメージを伝える
AIは「いい感じに作って」が最も苦手だ。なぜなら「いい感じ」の基準が人によって全く違うからだ。
代わりに、完成形の条件を具体的に伝える。
悪い例:
営業報告書を作って
良い例:
以下の条件で営業報告書を作ってください。
フォーマット: 箇条書き、A4で1枚に収まる量 必須項目: 訪問先、日時、参加者、商談内容、次のアクション、次回訪問予定日 トーン: 上司に提出するビジネス文書 長さ: 400字程度
ここで使えるのが「フォーマット・項目・トーン・長さ」の4点セットだ。この4つを伝えるだけで、やり直しが激減する。
効果: 1回目の回答の採用率が約2倍になる。
コツ3: ダメな例を先に見せる
意外に効果が高いのが「こういうのは要らない」と先に伝えることだ。
たとえば、社内向けの案内文を頼むとき:
社内向けの夏季休暇の案内文を作ってください。
注意: 以下のような表現は避けてください。
- 「平素は格別のご高配を賜り」のような過度に堅い挨拶
- 業務への影響について長々と書く部分
- 「何卒ご了承ください」の繰り返し
社員30人の会社で、普段からフランクなコミュニケーションを取っています。
AIは「避けるべきもの」の指示に素直に従う。望まない回答が返ってくる確率が大幅に下がる。
効果: 「求めていたのはこれじゃない」と感じる頻度が半分以下になる。
コツ4: 見本を1つ渡す

過去に自分が書いた文章を見本として渡すと、AIはその文体やフォーマットを再現しようとする。
たとえば、毎月の売上報告メールを書く場合:
毎月、以下のような形式で社長に売上報告メールを送っています。 同じ形式で今月分を作ってください。
【先月の見本】 件名: 3月度 売上報告
社長
お疲れさまです。経理の山本です。 3月度の売上をご報告します。
売上合計: 1,850万円(前月比 +5.2%) 新規顧客: 3件(目標4件に対し75%) 既存顧客: 安定。解約なし。
特記事項:
- A社との年間契約が更新済み(前年比+10%で合意)
- B社から追加発注の打診あり。来週訪問予定
来月の見通し: 4月は例年やや下がる傾向ですが、B社案件が決まれば 前月並みを維持できる見込みです。
山本
【今月の数字】 売上合計: 1,920万円 新規顧客: 4件 既存顧客: 1件解約(C社、事業縮小のため) 特記: D社と大型案件の契約締結(500万円)、E社から見積もり依頼 来月見通し: 新規2件の商談が進行中
このように見本と今月の素材を渡せば、AIは形式を揃えて、差し替えるべき数字だけを正しく入れた報告メールを返してくる。毎月の定型業務が5分で終わるようになる。
効果: 定型文書の作成時間が平均15分から3分に短縮。
コツ5: 1回で完璧を求めず、3回やり取りする

生成AIとのやり取りは、美容院と同じだ。最初に「短めでお願いします」と伝えて、途中で「もう少し右を」「前髪はこれくらいで」と調整していく。1回の指示で完璧な仕上がりを期待する人はいない。
生成AIも同じだ。最初の回答は「方向性の確認」くらいに思っておくと気が楽になる。
1回目: 大まかに頼む
来月の展示会の案内メールを取引先に送ります。下書きを作ってください。 展示会名: 住宅設備EXPO 2026 日時: 5月15-17日 場所: 東京ビッグサイト 当社ブース: B-42
2回目: 方向性を修正する
ありがとうございます。以下を修正してください。
- 冒頭の挨拶が長いので、2行以内にして
- 当社の新製品「省エネ型給湯ユニットSX-200」の展示を追加して
- 来場特典として「設計資料集の無料配布」があることも入れて
3回目: 仕上げる
良くなりました。最後に:
- 件名を「ご来場のお願い」ではなく「住宅設備EXPO 2026 ご案内」に変更
- 末尾に私の署名を入れて(営業部 鈴木太郎、電話: 03-XXXX-XXXX)
3回のやり取りで、そのまま送れるレベルのメールが完成する。合計で5分もかからない。
効果: 「そのまま使える率」が1回目の30%から3回目には90%に上がる。
コツ6: 役割を与える
「あなたは〇〇です」と役割を与えると、回答の視点と深さが変わる。
一般的な指示:
新入社員研修のカリキュラムを考えて
役割を与えた指示:
あなたは中小企業の人事担当者です。従業員25人の食品卸売会社で、来月入社する新入社員2名の研修カリキュラムを考えてください。
条件:
- 研修期間: 2週間
- 外部研修の予算はなし(社内OJTのみ)
- 配属先: 1名は営業、1名は経理
- 去年の新入社員から「座学が多すぎてつまらなかった」というフィードバックがあった
後者の方が、あなたの会社の規模感と事情に合った、実行可能なカリキュラムが出てくる。架空のコンサルタントを雇ったような効果が得られる。
効果: 回答の実用度が体感で2〜3段階上がる。
コツ7: 長い文章は「まず構成案だけ」で確認する
企画書、提案書、報告書など、長い文書をいきなり全文書いてもらうと、途中で方向がずれたときに全部やり直しになる。
そこで「まず見出しと各セクションの要点だけ箇条書きで出して」と頼む。構成案が期待通りなら「この構成で全文を書いて」と伝える。ずれていたら、構成の段階で修正する方がはるかに効率的だ。
取引先に提案する業務改善の企画書を作りたいのですが、まず全体の構成案だけ出してください。 各セクションは見出しと要点2〜3行にしてください。本文はまだ書かなくてOKです。
提案内容: 月次報告のペーパーレス化 提案先: 取引先の管理部長 目的: 印刷・郵送コストの削減と報告スピードの改善
構成が決まったら:
この構成で問題ありません。全文を書いてください。 追加条件: A4で3枚以内、図表は使わずテキストのみ
効果: 長文のやり直し回数が平均3回から1回に減る。作業時間は半分以下に。
コツ8: 表やリストで出してもらう
文章で返ってきた回答を読むのに時間がかかる場合は「表形式で」「箇条書きで」「比較表で」と指定する。
以下の3つの会計ソフトを比較したいです。 表形式で、以下の項目について比較してください。
対象: freee、マネーフォワード、弥生会計 比較項目: 月額料金、従業員数の上限、請求書発行機能の有無、銀行口座連携、サポート体制
私は従業員12人の小売業で、経理は私1人で担当しています。 最後に、私の状況に合うおすすめを1つ挙げてください。
このように頼むと、読みやすい比較表と、あなたの状況に合わせたおすすめが返ってくる。そのまま社長への報告資料に使える。
効果: 情報整理にかかる時間がゼロに近づく。
コツ9: 「〇〇な人にも分かるように」と読者を指定する
AIは、特に指定がないと「それなりに知識がある人」向けの文章を書く。社内の全員が読む文書や、ITに詳しくないクライアントに送る説明資料では、これがアダになる。
当社が導入する新しい勤怠管理システムの説明文を作ってください。
読者: パソコン操作に不慣れな60代のパート社員にも分かるように書いてください。 専門用語は使わず、手順は「画面のどこを押すか」まで具体的にお願いします。
「60代のパート社員にも分かるように」と書くだけで、AIは自動的に:
- 専門用語を避ける
- 手順を細かく分ける
- 画面の場所を具体的に示す
- 文字を大きくできるフォーマットで出力する
という調整をしてくれる。
効果: 「難しくて分からない」という問い合わせが減る。
コツ10: うまくいった頼み方を保存する
ここまでのコツを使って「この頼み方はいい結果が出る」と感じたら、そのまま保存しておくことをおすすめする。テキストファイルでもメモ帳でもいい。
たとえば:
【毎月の売上報告メール】
私は〇〇会社で経理を担当しています。 以下の数字を使って、社長宛の月次売上報告メールを作ってください。
形式: 先月の見本と同じ(メール冒頭に挨拶1行、本文は箇条書き、最後に来月の見通し1段落) トーン: ビジネスだが堅すぎない 長さ: 300字程度
【今月の数字】 (ここに毎月の数字を入れる)
このテンプレートを保存しておけば、毎月の作業は「数字を入れ替えて送信するだけ」になる。1回5分もかからない。
これは「プロンプトテンプレート」と呼ばれるもので、AIを日常的に使いこなしている人の多くがやっている方法だ。特別なツールは要らない。Wordのファイルに書いておくだけでいい。
効果: 繰り返し作業の準備時間がほぼゼロになる。
よくある不安と答え
コツを使っても結果が微妙な場合はどうすればいい?
まず「自分が何者か」と「完成形の条件」が入っているか確認する。この2つが抜けていると、どんなコツを使っても結果がぼんやりする。それでも改善しない場合は「この回答のどこが期待と違うか、具体的に教えてほしい」とAIに伝えると、AIが自分の回答を修正しながら改善してくれる。
長い指示を書くのが面倒に感じる
最初は面倒に感じるかもしれない。でも「曖昧な指示で5回やり直す」のと「丁寧な指示で1回で済む」のとでは、後者のほうが結果的に早い。慣れると、条件を箇条書きにするだけなので30秒で書ける。記事末尾のチートシートを使えば、考える時間も省ける。
無料プランでもこのコツは使える?
すべて無料プランで使える。コツの内容は「頼み方のパターン」なので、プランによる差はない。ただし、無料プランは1日の利用回数に制限がある。コツ5の「3回やり取りする」を多用すると回数を消費するので、重要な作業に優先して使うのがおすすめだ。
Claude CoworkとChatGPT、どちらでもこのコツは使える?
どちらでも使える。今回紹介した10のコツは特定のサービスに依存しない。Claude Cowork(クロード・コワーク)でもChatGPT(チャットジーピーティー)でも、Gemini(ジェミニ)でも同じ効果が得られる。
まとめ
生成AIの結果が「なんか微妙」になる原因の8割は、頼み方にある。自分が何者かを名乗る、完成形の条件を伝える、見本を渡す、3回やり取りする。この4つを意識するだけで、AIの回答は「使い物にならない下書き」から「そのまま使える成果物」に変わる。10のコツをすべて覚える必要はない。まず明日、1つだけ試してみてほしい。
特典
今回紹介した10のコツを、印刷して手元に置ける1枚のチートシートにまとめた。各コツの悪い例と良い例を並べているので、AIに何かを頼むときにちらっと見るだけで頼み方が改善される。
→ 生成AI 頼み方チートシート(PDF)を無料ダウンロード /resources
参考リファレンス
- Anthropic公式サイト: claude.ai
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