「使ってもいない道具の説明書を、AIが毎回読まされている」——そんなムダが、やっと目に見えるようになりました。
Claude Code の 2.1.261 が公開されました。派手な新機能はありません。でも中身は「AIの机の上を片づける」話です。今回の新顔は3つ。使っていない作業マニュアルを洗い出す /skill-doctor、AIが一度に受け取れる出力の量を最大128K文字まで引き上げる2つの設定、そしてAIの分身への指示書をファイルで渡せるオプション。どれも「AIが賢くなった」話ではなく、「AIに渡すものを減らす・整える」話です。ここが効きます。AIは渡された量だけお金と時間を使うからです。
※この記事は2026年9月時点の情報です。内容は公式の変更履歴(=かんたんに言うと、更新のたびに書かれる「変更点の一覧表」)に基づきます。
今回の主役は「AIの机の広さ」
まず、この記事でいちばん大事な言葉をひとつだけ翻訳します。
コンテキスト=かんたんに言うと、AIが一度に見ていられる「机の広さ」です。
あなたが仕事をするとき、机の上に資料を広げますよね。机は無限ではありません。使わない資料を置きっぱなしにすると、本当に必要な資料を広げる場所がなくなります。AIもまったく同じです。しかも机に置いた資料の量は、そのまま料金と待ち時間になります。
今回の 2.1.261 は、この「机」に関する更新が並んでいます。使っていない資料を見つける道具(/skill-doctor)。必要な資料をちゃんと机に載せるための設定(出力の上限)。分身に渡す指示書を、コマンドに直接書かずファイルから渡す仕組み。
たとえるなら、AIを賢くする話ではなく、AIの作業机を整理整頓する話です。地味です。でも毎日効きます。
/skill-doctor:使っていないマニュアルの「置き場所代」が見える
新しく追加された /skill-doctor は、こういう道具です。
スキル=かんたんに言うと、AIに覚えさせた「作業マニュアル」のこと。「請求書はこう作る」「記事はこう書く」といった手順書を、あらかじめAIに持たせておく仕組みです。
便利なので、使っていくうちに増えます。10個、20個と増えます。ここで問題が起きます。読み込まれたマニュアルは、使っていなくても机の上を占領するんです。あなたは今日1つしか使っていないのに、20個ぶんの場所代を毎回払っている。そんな状態になりがちです。
/skill-doctor は、この状態を見せてくれます。公式の説明はこうです。読み込まれたスキルのうち、どれが使われていないか。そして、それが机の上でどれだけの場所を食っているか。それを表示して、整理できるようにする。
つまり「捨てる判断に必要な材料」が出てくるということ。今まではこれが見えませんでした。感覚で「多いかも」と思うだけでした。それが数字になります。
やることは1行です。Claude Code を開いて /skill-doctor と打つ。それだけ。結果を見て、半年使っていないマニュアルを外す。これが今日できる一番手軽な改善です。
出力が途中で切れて止まる問題に、2つの設定
次が bashOutputMaxChars と taskOutputMaxChars です。名前は硬いですが、やることは単純です。
AIに作業をさせると、結果がずらっと出ます。テストの結果、ログ、エラーの山。この量が多すぎると、Claude Code はそれをファイルに保存して、AIには「ファイルに入れました」とだけ伝えます。中身を全部は見せないんです。机が埋まらないようにする、安全装置ですね。
でも困る場面があります。大事な情報が、保存された側に入ってしまうとき。AIは「ファイルにあります」としか知らないので、原因を見つけられません。あなたは「なんで分からないの」とイライラする。よくある詰まりどころです。
今回、その線引きを自分で決められるようになりました。
bashOutputMaxChars:コマンドを実行した結果を、どこまでそのままAIに渡すかtaskOutputMaxChars:裏で走らせた作業の結果を、どこまでそのままAIに渡すか
上限は最大128K文字(12万8千文字ほど)。文庫本1冊を軽く超える量です。ログを丸ごと読ませたい人には、かなり余裕があります。
中級者向け:上げっぱなしは損になりやすい
ここが今回いちばんの落とし穴です。「最大まで上げれば最強」ではありません。
思い出してください。机に載せた量は、そのまま料金と時間になります。12万8千文字のログを毎回まるごと読ませたら、その分のコストがかかるのが普通です。しかも机が埋まれば、その後の会話に使える余白が減ります。
現実的な使い分けはこうです。普段は控えめ。詰まった時だけ一時的に上げる。 原因が分からない不具合を追いかけている日だけ大きくして、終わったら戻す。これが無駄のない使い方です。
なお設定の正確な書き方(どのファイルに、どんな形式で書くか)は、お使いのバージョンの設定画面と公式の変更履歴で確認してください。名前だけ覚えて雰囲気で書くと、静かに無視されて「効かないな」で終わります。
AIの分身に渡す「指示書」をファイルで渡せる
3つめが --append-subagent-system-prompt-file です。長いですが、意味は分解すると簡単です。
サブエージェント=かんたんに言うと、AIの分身。本体とは別に走らせる、下請けのAIです。「この調査だけやっといて」と投げる相手ですね。
システムプロンプト=かんたんに言うと、その分身に渡す「基本の指示書」。あなたは誰で、何を守って、どう振る舞うか。作業のたびに毎回渡すルールブックです。
これまでは、この指示書をコマンドの後ろに直接書いていました。短ければ問題ありません。でも本気で書くと、指示書は長くなります。長くなりすぎると、コマンドに書ききれません。
今回のオプションで、指示書をファイルに書いて、そのファイルを読ませることができるようになりました。名前が append(=付け足す)なので、元の指示に上書きするのではなく、足す形です。
これ、地味ですが効きます。指示書がファイルになるということは、履歴で管理できるということ。チームで共有できるということ。「先週のほうが精度よかったのに」を、ファイルの差分で追えるということです。指示書を「使い捨ての文字列」から「育てる資産」に変える変更、と考えると分かりやすいです。
会社で使う人・スマホから使う人に効いた修正
新機能以外も、実務に効くものが並びました。数が多いので、効き目が大きいものだけ選びます。
組織のルールが読めない理由が表示されるようになった。 /status と claude doctor に「Organization policy」という行が増えました。会社のルール設定が読み込めなかったとき、その理由(たとえば、社内のプロキシがその通信先を通していない)が出ます。今までは「なんか効いていない」で終わっていた話が、原因まで出るようになったわけです。会社支給のパソコンで使う人は、まずここを見てください。
Remote Control まわりで5つの不具合が直りました。 Remote Control は、スマホやブラウザから、パソコンで動いているAIを触る機能です。直ったのはこのあたり。
- 止めたのに、ぐるぐる回るマークと「Stop」ボタンが残り続ける
- スマホ側に表示される権限の状態が、古いまま更新されない
- Windows のパソコンで、通信を検査するタイプの社内プロキシがあると、受信が失敗する
/teleportで持ってきたセッションが、つながっている別のセッションに混ざる- 設定で決めたはずの effort(=かんたんに言うと、AIがどれだけ念入りに考えるかの段階)が、claude.ai 側では初期値のまま表示される
入力そのものの不具合も直りました。 速く打ったりキーを押しっぱなしにしたとき、文字の順番が入れ替わったり、消えたりする問題。地味ですが、毎日触る人ほど積もるストレスです。
お金に関わる表示も改善。 /usage と VS Code の使用量パネルで、混み合っているときや起動直後に、モデルごとの週の上限が表示されないことがありました。これが直っています。上限を見ながら使う人には大きい話です。
裏で走る作業の見え方も。 ターミナルの進捗表示(iTerm2 / Ghostty / ConEmu)が、裏の作業がまだ動いているのに「終わった」と出る問題。それと、裏の作業を再開できないときに、再試行を繰り返してパソコンが重くなる問題。どちらも直りました。
日本のあなたが、今日どう真似るか
海外の更新情報を読むだけで終わらせない方法を書きます。やることは「棚卸し」です。
まず /skill-doctor を打って、使っていないマニュアルを見つける。次に claude doctor で、組織のルールがちゃんと読めているか見る。この2つで現状が分かります。
そのうえで、AI本人に整理を手伝わせます。下のプロンプトをそのまま貼ってください。
あなたは私のAI作業環境の整理係です。以下の5項目を10点満点で採点し、点数・理由・今日やる改善を1行ずつ出してください。専門用語は使わず、中学生に説明するつもりで書いてください。 1)読み込まれているマニュアル(スキル)のうち、直近1か月で実際に使ったものの割合 2)作業の結果が長すぎて途中で切れ、原因調査が止まった回数 3)分身に渡す指示書が、ファイルとして残って共有できているか 4)会社のルール設定や接続まわりで、原因不明のまま放置している警告があるか 5)使っているツールの更新内容を、月に1回以上確認できているか 最後に、いちばん先に直すべき項目を1つだけ選び、その理由を3行で書いてください。 点が低かったときの打ち手は、これです。 - 1)が低い:3か月使っていないマニュアルを外す。迷ったら「今月使ったか」だけで判断する - 2)が低い:詰まった日だけ出力の上限を上げる。終わったら必ず戻す - 3)が低い:指示書をファイルに移し、更新のたびに履歴を残す - 4)が低い:`/status` の Organization policy 行を見て、出た理由をそのまま社内の担当に投げる - 5)が低い:月1回、更新の一覧表を見る予定をカレンダーに固定する 業種別の穴埋め例も2つ置いておきます。項目を自分の仕事に置き換えるだけです。 **ネット通販の在庫発注に使う場合**:1)は「発注ルールのマニュアルのうち、実際に使ったものの割合」。2)は「在庫データが長すぎてAIが最後まで読めなかった回数」。3)は「発注判断の基準がファイルで共有されているか」。 **問い合わせの一次対応に使う場合**:1)は「返信テンプレのうち、今月使ったものの割合」。2)は「過去のやり取りが長すぎて、AIが経緯を見失った回数」。3)は「NG表現や言い回しのルールがファイルで残っているか」。 <!-- FIGURE:flow title="棚卸しの手順" steps="/skill-doctor で使っていないマニュアルを出す|claude doctor で組織のルールを確認する|上のプロンプトで5項目を採点させる|いちばん低い1項目だけ、今日直す" -->
まとめ:整理は、増やすより安く効く
今回の 2.1.261 は「AIが賢くなる更新」ではありません。「AIに渡すものを、あなたが選べるようになる更新」です。そしてこの手の改善は、新しい道具を買い足すより安く、効果が長く続きます。
今日(15分):/skill-doctor を実行する。使っていないマニュアルの名前と、それが食っている量をメモする。ついでに claude doctor と /status を開いて、赤い行がないか見る。
1週間(1時間):3か月使っていないマニュアルを外す。分身への指示書をファイルに移す。出力の上限を、普段用の控えめな値で決めておく。上の棚卸しプロンプトを1回まわして、いちばん低かった1項目だけ直す。
1か月:更新の一覧表を月1回チェックする予定をカレンダーに入れる。指示書ファイルの変更履歴を見て、「精度が上がった書き方」を自分の型として固める。ここまで来ると、あなたの環境は他人にそのまま渡せる資産になります。
道具を増やすのは簡単です。減らすほうが、たいてい効きます。

