「提案書を作るのに半日かかる」。これは、法人営業の世界で最もよく聞く嘆きの一つです。
先月、製造業向けSaaSを販売している企業の営業部長から相談を受けました。「うちのチームは週に2〜3件の提案書を作っている。1件あたり2〜3時間。つまり週6〜9時間を提案書に費やしている。しかも、メンバーによって品質がバラバラで、マネージャーの赤入れでさらに1時間かかる」。
別の広告代理店の営業マネージャーも同じ悩みを抱えていました。「クライアントごとにカスタマイズが必要だから、テンプレートを用意しても結局ゼロから書き直している。構成を考えるだけで30分、コピーを書くのに1時間、数字を入れるのに30分、想定Q&Aを考えるのに30分。気がつけば3時間経っている」。
Claude を使えば、この2〜3時間が30分に短縮できます。
結論から言うと、リサーチ結果と自社サービスの情報を入力するだけで、(1)構成案、(2)各スライドのコピー、(3)数値根拠、(4)想定Q&Aの4点が30分で揃います。品質はマネージャーの赤入れがほぼ不要なレベルです。
本記事を読み終えると、次の4つが手に入ります。
- 10枚構成の提案書テンプレート(課題→解決策→効果→費用→スケジュール→FAQ)
- コピペで使えるプロンプト3本(構成案 / スライドコピー / 想定Q&A)
- エージェントパッケージ(CLAUDE.md + カスタムコマンド3本のセット)
- 提案書の品質チェックリスト
エージェントパッケージを無料ダウンロード → CLAUDE.md + スラッシュコマンド3本のセット
なぜ提案書作成に2〜3時間かかるのか
提案書作成の工程を分解すると、ボトルネックが明確になります。
| 工程 | 所要時間 | ボトルネックの原因 |
|---|---|---|
| 構成を考える | 30分 | 毎回ゼロから考えている |
| 各ページのコピーを書く | 60分 | 文章力に依存、推敲に時間がかかる |
| 数値根拠を調べて入れる | 30分 | 散在するデータを探す手間 |
| 想定Q&Aを考える | 30分 | 経験が浅いと想定できない |
| マネージャーレビュー | 30分 | 品質のバラツキ是正 |
| 合計 | 3時間 |
最大のボトルネックは「構成を考える」と「コピーを書く」の2つ。合計で90分、全体の半分を占めます。
そしてこの2つは、まさに大規模言語モデルが最も得意とする領域です。構造化された情報をインプットすれば、論理的な構成と説得力のあるコピーをアウトプットできる。
10枚構成の提案書テンプレート
まず、Claude で生成する提案書の「型」を決めます。以下は、法人営業で汎用的に使える10枚構成のテンプレートです。
| スライド番号 | タイトル | 内容 | 所要秒数(プレゼン時) |
|---|---|---|---|
| 1 | 表紙 | 提案タイトル、日付、提案者名 | 30秒 |
| 2 | エグゼクティブサマリー | 提案の要旨を3行で | 60秒 |
| 3 | 御社の現状理解 | リサーチ結果に基づく現状分析 | 90秒 |
| 4 | 課題の整理 | 3つの課題を構造化 | 90秒 |
| 5 | 解決策の概要 | 自社サービスの全体像 | 90秒 |
| 6 | 具体的な施策 | 3つの施策と実行内容 | 120秒 |
| 7 | 期待される効果 | 定量効果(数値)+ 定性効果 | 90秒 |
| 8 | 導入スケジュール | 3ヶ月間のロードマップ | 60秒 |
| 9 | 費用・プラン | 3つの料金プラン | 60秒 |
| 10 | FAQ・ネクストステップ | 想定Q&A 3問 + 次のアクション | 60秒 |
このテンプレートのポイントは、スライド3「御社の現状理解」を入れていることです。
多くの提案書は「自社サービスの説明」から入ります。しかし、相手が最も知りたいのは「この人はうちのことを分かっているか?」です。現状理解を最初に示すことで、「この人は信頼できる」という印象を与え、その後の提案が刺さりやすくなります。
前回の記事「初回商談前のリサーチを Claude で完全自動化する方法」で解説したリサーチシートがあれば、このスライド3の内容は自動的に揃います。
プロンプト1:構成案の生成(/proposal-outline)
あなたは法人営業の提案書作成のプロフェッショナルです。
以下の情報をもとに、10枚構成の提案書の構成案を作成してください。
## インプット情報
### クライアント情報
- 企業名: {{client_name}}
- 業界: {{industry}}
- 従業員規模: {{employee_count}}
- 商談相手の役職: {{role}}
### リサーチ結果
{{research_result}}
### 自社サービス情報
- サービス名: {{service_name}}
- 主な機能: {{features}}
- 料金体系: {{pricing}}
- 導入実績: {{case_studies}}
## 出力フォーマット
各スライドについて以下を記載:
### スライド{{number}}: {{タイトル}}
- キーメッセージ: (このスライドで伝えたいこと1文)
- 記載内容: (箇条書き3〜5点)
- ビジュアル案: (図解・グラフ・画像の種類)
- 話法メモ: (プレゼン時にどう話すか1〜2文)
## ルール
- クライアント固有の情報を必ず含めること(汎用的な内容にしない)
- 数値は根拠を添えること
- 競合他社名は伏字にすること
- 「御社の〜」で始まる文を各スライドに1つ以上含めること
このプロンプトのポイントは、「ビジュアル案」と「話法メモ」を含めていることです。
構成案の段階で「このスライドにはどんな図を入れるか」「どう話すか」まで決めておくと、後の工程が格段にスムーズになります。特に「話法メモ」は、提案書を作った人とプレゼンする人が異なる場合(マネージャーが作って部下がプレゼンする等)に威力を発揮します。
プロンプト2:スライドコピーの生成(/proposal-slide)
あなたは法人営業の提案書コピーライターです。
以下の構成案に基づいて、各スライドの詳細なコピー(文章)を作成してください。
## 構成案
{{proposal_outline}}
## 出力フォーマット
### スライド{{number}}: {{タイトル}}
#### ヘッドライン
(1行、20文字以内。このスライドの結論)
#### サブヘッドライン
(1行、補足説明)
#### ボディコピー
(箇条書き3〜5点。各点は2行以内)
#### 数値ハイライト
(このスライドで強調する数字。なければ「なし」)
#### 注釈
(出典、前提条件、補足。なければ「なし」)
## コピーの品質基準
- ヘッドラインは「結論ファースト」。読んだだけでスライドの主旨がわかること
- ボディコピーは「1ポイント1行」。長文は禁止
- 数値は必ず比較対象を添える(「30%削減」ではなく「月120時間→84時間(30%削減)」)
- 受動態を避け、能動態で書く
- 「〜することができます」は「〜できます」に短縮
- 主語は「御社」を多用し、「弊社」は最小限に
このプロンプトの秘訣は、「コピーの品質基準」を明示していることです。
Claude に「いい感じに書いて」と頼むと、冗長で曖昧なコピーが出力されます。しかし、「ヘッドラインは20文字以内」「1ポイント1行」「受動態を避ける」といった具体的なルールを与えると、プロのコピーライターが書いたようなシャープなコピーが出てきます。
プロンプト3:想定Q&Aの生成(/proposal-qa)
あなたは法人営業のベテランマネージャーです。
以下の提案書の内容に対して、クライアントから出そうな質問とその回答を準備してください。
## 提案書の内容
{{proposal_content}}
## クライアント情報
- 企業名: {{client_name}}
- 業界: {{industry}}
- 商談相手の役職: {{role}}
- 過去の商談での反応: {{past_feedback}}
## 出力フォーマット
### 質問カテゴリ1: 費用・ROI に関する質問
#### Q1: {{想定質問}}
- 質問の意図: (相手が本当に知りたいこと)
- 回答案: (3行以内)
- 切り返しトーク: (回答後に主導権を戻す一言)
- NG回答: (これだけは言ってはいけない)
### 質問カテゴリ2: 導入・運用に関する質問
(同じフォーマットで3問)
### 質問カテゴリ3: 競合・比較に関する質問
(同じフォーマットで2問)
### 質問カテゴリ4: セキュリティ・コンプライアンスに関する質問
(同じフォーマットで2問)
## ルール
- 質問は「相手の立場」で考えること(担当者と役員では質問が異なる)
- 回答は「正直に、かつポジティブに」
- 競合比較は「我々の強み」に焦点を当て、競合の弱みには言及しない
- 「NG回答」は必ず入れること(失言防止)
このプロンプトが優れている点は、「NG回答」を明示的に求めていることです。
営業の失敗の多くは「言ってはいけないことを言ってしまう」ことから起きます。たとえば、「うちは競合のA社より安いです」「導入は簡単です(実際は3ヶ月かかる)」「御社のような小規模企業でも大丈夫です(失礼)」。こうした地雷を事前に洗い出しておくことで、商談中の事故を防げます。
3つのプロンプトを組み合わせた実践ワークフロー
| ステップ | 所要時間 | 使うプロンプト | アウトプット |
|---|---|---|---|
| 1. 構成案生成 | 10分 | /proposal-outline | 10枚の構成案 |
| 2. コピー生成 | 15分 | /proposal-slide | 全スライドのコピー |
| 3. Q&A生成 | 5分 | /proposal-qa | 想定Q&A 10問 |
| 合計 | 30分 |
従来2.5時間かかっていた提案書作成が30分に短縮。**時間削減率は80%**です。
週3件の提案書を作る営業パーソンなら、週あたり6時間の削減。月間で24時間、つまり丸3営業日分が浮きます。
エージェントパッケージの導入方法
エージェントパッケージを無料ダウンロード → CLAUDE.md + スラッシュコマンド3本のセット
パッケージの構成
sales-proposal-builder/
├── CLAUDE.md # 提案書作成のルール・トーン
├── .claude/
│ └── commands/
│ ├── proposal-outline.md # 構成案の生成
│ ├── proposal-slide.md # スライドコピーの生成
│ └── proposal-qa.md # 想定Q&Aの生成
└── README.md # セットアップガイド
CLAUDE.md のカスタマイズポイント
パッケージの CLAUDE.md には以下の項目を自社に合わせて設定します。
| 設定項目 | 説明 | 例 |
|---|---|---|
| サービス概要 | 自社サービスの1行説明 | 「中堅企業向けクラウド会計ソフト」 |
| 提案書のトーン | フォーマル/カジュアルの度合い | 「ですます調、ただし堅すぎない」 |
| 必須セクション | 必ず含めるスライド | 「セキュリティ説明は必須」 |
| 禁止表現 | 使ってはいけない言葉 | 「業界最安値」「他社に負けない」 |
| 価格表示ルール | 価格の出し方 | 「月額のみ表示。年額は口頭で」 |
実践事例:広告代理店C社での導入効果
従業員30名の広告代理店C社で、営業チーム5名にこのパッケージを導入した事例です。
導入前
- 提案書作成: 1件あたり2.5時間
- 週3件 × 5名 = 週37.5時間
- マネージャーレビュー: 1件30分
- 品質のバラツキ: 新人の提案書はマネージャーが7割書き直していた
導入後(2ヶ月経過)
- 提案書作成: 1件あたり30分
- 週3件 × 5名 = 週7.5時間(週30時間の削減)
- マネージャーレビュー: 1件5分(微修正のみ)
- 品質: 新人とベテランの差がほぼなくなった
- 提案書の勝率: 32%→41%(+9pt)
勝率が上がった要因を分析すると、「現状理解」スライドの品質が上がったことが最大の要因でした。以前はクライアント固有の情報が薄く、汎用的な提案書になりがちだった。Claude にリサーチ結果を入力することで、クライアントの状況に合わせたカスタマイズが自動的に行われるようになりました。
提案書の品質チェックリスト
Claude で生成した提案書を最終チェックする際のリストです。
構成チェック
- エグゼクティブサマリーを読むだけで提案の全容がわかるか
- 「現状理解」にクライアント固有の情報が含まれているか
- 課題と解決策が1対1で対応しているか
- 効果の数値に根拠(出典)があるか
コピーチェック
- ヘッドラインが20文字以内で結論を示しているか
- 1スライドの文字量は200文字以内か(詰め込みすぎていないか)
- 「御社」で始まる文が各スライドに1つ以上あるか
- 禁止表現(業界No.1等)が含まれていないか
Q&Aチェック
- 費用に関する質問が含まれているか
- 競合比較の質問への回答が準備されているか
- NG回答が明記されているか
よくある失敗パターンと対策
失敗1:汎用的な提案書になる
リサーチ結果を入力せずに「提案書を作って」と頼むと、どのクライアントにも使えるような汎用的な内容になります。
対策: 必ず前回の記事で紹介したリサーチ自動化を先に実行し、その結果をインプットとして使う。
失敗2:数値が曖昧
「大幅なコスト削減が期待できます」のような曖昧な表現をClaude が出力することがあります。
対策: プロンプトに「すべての効果は具体的な数値(%、時間、金額)で表現すること。数値が不明な場合は[要見積]と記載すること」を追加する。
失敗3:自社サービスの説明が長すぎる
Claude は与えられた情報を丁寧に説明しようとするため、自社サービスの説明が冗長になりがちです。
対策: 「自社サービスの説明は全体の20%以内に収めること。80%はクライアントの課題と解決策に割くこと」というルールを追加する。
まとめ:30分で「通る」提案書を作る
10枚構成のテンプレートで「型」を固定する。毎回ゼロから構成を考える時間がゼロになる。
**3つのプロンプトを順番に実行(構成→コピー→Q&A)**するだけで、2.5時間の作業が30分に短縮。
「現状理解」スライドがキモ。リサーチ結果をインプットすることで、クライアント固有の提案書が自動生成される。
品質チェックリストで最終確認。Claude の出力をそのまま使うのではなく、必ず人間の目でチェックする。
エージェントパッケージでチーム全体の品質を統一。新人もベテランも同じ精度の提案書を作れるようになる。




