「開発会社に頼めない」を逆手に取った男
2026年1月、イタリア在住のソロ起業家Mattia Pomelliは、Indie Hackersに一本の投稿を上げました。タイトルは『Hitting $10K MRR in 6 weeks with an AI design tool』。
彼が作ったのは『Sleek.design』というAIモバイルアプリデザインツール。プロンプトを入れるとiOS/Androidアプリの画面デザインがAIで生成されるサービスです。
注目すべきは、その数字の組み立て方です。
- MVP構築: 3週間
- launchから$10K MRRまで: 6週間
- 広告費: $0
- マーケ手段: XとRedditのオーガニック投稿のみ
- チーム: 本人1人
「チームを雇う余裕はない」「広告費にお金を回せない」という制約を、逆にレバレッジに変えた事例です。
ファクト1: MVPを3週間で出せた本当の理由
Mattiaが3週間でMVPを出せたのは、天才だからではありません。過去に作ったデザインツールのコードを流用したからです。
彼は以前から複数のデザイン関連プロダクトを作っており、認証・決済・ダッシュボード・ファイル管理といった「どのSaaSでも必要になる部分」を自分のコードベースとして持っていました。
つまり、ゼロから書いたのは『AI生成ロジック』と『モバイルUIプレビュー』の差分だけ。残りは過去資産のコピペに近い再利用です。
これは日本の個人開発者にも再現可能な発想です。1本目のプロダクトは失敗しても、コード資産は残ります。2本目、3本目と積み上げるほど、MVPまでの時間は加速度的に縮んでいきます。

ファクト2: スタック選定は「枯れた組み合わせ」
使っている技術は、驚くほど標準的です。
| 領域 | ツール |
|---|---|
| フロント/API | Next.js |
| DB/Auth | Supabase |
| ホスティング | Vercel |
| 分析 | PostHog |
| 決済 | Stripe |
| メール | Resend |
特別な技術は一つもありません。全部、Claude CodeやCursorが完璧にサポートしているスタックです。
「新しいフレームワークを学ぶ時間」を「ユーザーと話す時間」に変換したとも言えます。技術スタックで差別化しない、というのが一つの選択肢として示されています。
ファクト3: 広告費ゼロで$10K MRRに到達した導線
Mattiaが使ったマーケチャネルは2つだけです。
- X(旧Twitter): 開発過程・デモ動画・数字のオープン公開(Build in Public)
- Reddit: r/SideProject、r/indiehackers、r/design系サブレディットでの事例共有
どちらも「宣伝」ではなく「プロセスの共有」として投稿しているのがポイントです。『こんな機能を実装した』『初日のMRRはこうだった』という具体の数字と画面を出すことで、観ている人が勝手に興味を持つ構造を作っています。
日本人読者向けに翻訳するなら、ここはnote・Zenn・Qiitaでの『開発ログ記事』が同じ役割を果たします。商品を売るのではなく、作っている過程を公開する。Mattiaの手法は、日本でも十分に機能する選択肢です。

日本人読者が真似できる5ステップ
ここまでのファクトを、日本の個人開発者が明日から動かせる形に翻訳します。
ステップ1: ニッチを1つに絞る Mattiaは『デザインツール』ではなく『AIモバイルアプリデザインツール』まで絞っています。Figma競合ではなく、特定のユースケースで刺す。
ステップ2: スタックを固定する Next.js + Supabase + Vercelの組み合わせは、Claude Codeが最も得意な構成の一つです。学習コストを下げ、実装速度に全振りできます。Claude Code自体の費用はClaude Codeの料金を完全解説|全プラン早見表と実費シミュレーションにある通り月額数千円からで、小さく始めれば固定費は月1万円前後に収まる構成です。
ステップ3: 過去コードを『資産ライブラリ』として管理する 認証・決済・レイアウトは毎回書き直さない。テンプレート化して次のプロダクトで使い回す。これが2本目以降のスピードを決めます。
ステップ4: Build in Publicを日本語でやる noteとXで開発ログを書く。売上・MAU・失敗も公開する。Mattiaと同じ構造を、日本語圏で再現できます。
ステップ5: launchしてから改善する 3週間のMVPは『完成品』ではなく『話のネタ』です。ユーザーの反応を見てから2週目以降の機能を決める。
数字が示す希望
$10K MRRは、日本円で約150万円/月。年換算で1,800万円です。
これを一人で、広告費ゼロで、6週間で到達した事例があるという事実は、日本の個人開発者にとって重要なベンチマークになります。『開発会社に300万円払う』という選択肢の代わりに、『自分でClaude Codeを使って作る』という選択肢が、現実的な数字として成立しています。
よくある不安と答え
Q. 過去のコード資産がない1本目でも、3週間で出せますか?
正直に言うと、1本目から3週間は簡単ではありません。Mattiaの3週間は、過去プロダクトの資産再利用があってこその数字です。ただし2026年の今は、認証・決済・管理画面のような汎用部分をClaude Codeがほぼ自動で組み上げるため、1本目でも1.5〜2ヶ月あれば公開まで届く感覚です。そして2本目からは、あなたにも資産の再利用が効き始めます。1本目は売上ではなく、資産作りの投資と割り切るのが精神衛生上もおすすめです。
Q. デザインの知識も開発の経験もありません。
Mattiaの事例はAIデザインツールを作った話ですが、あなたが同じ土俵で戦う必要はありません。コードに触れる前に、ブラウザだけで完結するClaude Cowork とは|非エンジニアのための「話すだけで仕事が進むAI」入門ガイドで資料作成や分析を任せる感覚を掴み、それから開発に進む順番が非エンジニアには現実的です。
Q. 月いくらの固定費で運営できますか?
Mattiaのスタックは、いずれも無料枠のあるサービスで構成されています。検証段階ならVercelとSupabaseは無料枠、StripeとResendは使った分だけの従量課金で、実質の固定費はClaude Codeの月額数千円が中心です。売上が立つまで固定費を1万円台に抑えられることが、このスタックを選ぶ大きな理由になります。売上が月3万円を超えたら有料プランへ引き上げる、と最初に決めておくと迷いません。
Q. Build in Publicと言われても、発信するネタがありません。
発信のネタは成果ではなく過程です。今日詰まったエラー、最初のユーザーの反応、価格を変えた理由。Mattiaの投稿も、中身は地味な進捗報告の積み重ねでした。完成してから告知するのではなく、作り始めた日から週2本の開発ログを書くと決めてしまうのが、広告費ゼロ集客の実質的なスタートラインです。
Q. Next.js以外の技術ではだめですか?使い慣れたツールがあります。
だめではありません。大事なのはMattiaの『スタックを固定して学習コストをゼロにする』という考え方のほうです。ただし、これから始める人がゼロから選ぶなら、Next.js + Supabase + Vercelの組み合わせには実利があります。世界中の個人開発者が同じ構成を使っているため、Claude Codeが参照できる知見が最も厚く、詰まったときの解決も速いからです。迷う時間そのものがコストだと考えると、実績のある構成に乗るのが合理的です。
次に読む: ソロ起業の海外事例シリーズ
- 【Base44】創業6ヶ月でWixに120億円売却: Claudeで『バイブコーディング』プラットフォームを作った個人開発者
- 【Marc Lou】2025年に1,032,000ドル売った個人開発者: 『4つのマイクロSaaS』ポートフォリオ戦略
- 【データで見る2025】ソロ起業家の半数がAIで作っている: 個人事業が団体戦を上回る時代の到来
3週間MVPの機能の削り込みを自分のアイデアでやってみたい方は、無料30分の相談で一緒に設計しましょう。削る機能を決めるだけでも、公開までの距離は一気に縮まります。
実践: コピーして使えるプロンプト
Mattiaと同じアプローチをClaude Codeで試すための初期プロンプトを用意しました。[ ]の中を自分のアイデアに置き換えて、そのまま貼り付けてください。
あなたはソロ開発の伴走パートナーです。次の条件で『3週間で出すMVP』の計画と実装を手伝ってください。【プロダクト】
- 一行説明: [例: 飲食店向けのシフト表自動作成ツール]
- ターゲット: [例: 従業員10名以下の飲食店オーナー]
- 課金する価値のあるコア体験: [例: スタッフの希望を貼り付けたら翌月のシフト表が完成する]
【技術スタック(固定)】
- Next.js + Supabase + Vercel + Stripe
【やってほしいこと】
- コア体験に不要な機能をすべて削った『3週間MVP』の機能リストを作る
- 週ごと(1週目: 骨組み / 2週目: コア機能 / 3週目: 決済と公開)のタスクに分解する
- 1週目のコードを実際に生成する
- 公開後にnoteとXへ投稿する開発ログ1本目の構成案を作る
【制約】
- 一人で運営する前提。管理画面や問い合わせ対応は最小化する
- 認証・決済など汎用部分は、次のプロダクトでも使い回せる形で分離する




