同じAIが、2ヶ月で「禁止」から「無料」へ
2026年7月、AnthropicはFable 5の無償アクセスを7月19日まで延長すると発表しました。有料プランの利用者は、週の利用枠の半分までFable 5を追加料金なしで使えます。もともとはもっと早く終える予定でしたが、利用者の反発を受けて延長されました。
同じFable 5をめぐって、わずか2ヶ月前には正反対のことが起きていました。米政府が公開3日で提供を止めたのです。かたや国家に止められ、かたや競争で無料で配られる。この振れ幅そのものが、いまのAIの状況を映しています。
なぜ、最先端を無料で配るのか
この7月、OpenAIはGPT-5.6を公開し、マスク氏のGrok 4.5も稼働。最上位モデルが数週間おきに入れ替わる消耗戦です。ただ、私はこの延長劇の本質は競争そのものより、一段下にある構造だと見ています。生成AIは使われるたび推論の実費がかかるため、定額制は使われるほど提供側が赤字になる。だから本来は従量課金(使った分だけ支払う形)へ寄せたい。実際、無償枠超過後の「usage credits」という課金の配管はすでに敷かれています。それでも、GPT-5.6の直後に自社の最新モデルを絞るのは競争上不利すぎる。だから配ってでも引き止める。無償延長は気前の良さではなく、移行したいのに移行できない板挟みの表れです。
配られる時こそ、距離を取る
最先端が無料なのはありがたい。ですが無料は「今だけ」です。7月19日を過ぎれば、枠の半分を超えた分は従量課金か、別モデルへの切替になります。無料を前提に業務を組むと、期限が来た時にコストか中断が来ます。
この構図には既視感があります。配車サービスの普及期と同じ、投資マネーで人工的に安くする補助金価格です。市場を取るまでは配り、取り終えたら正常化する。つまり、いま見ている価格は本当の価格ではありません。「政府に止められる」話と「競争で配られる」話は、逆に見えて同じことを教えています。揺れるものの上に、仕事の土台を乗せない。依存すべきは、どのモデルかではなく、乗り換えても自社に残る手順・判断・データのほうです。
具体的には、仕事を3つの層で持ちます。指示文は自社の手順書1枚に(第1層・手順)、成果物と判断は自社フォルダに(第2層・データ)、モデルは差し替え可能な部品として(第3層・モデル)。判定はひとつ、「いま使っているAIをやめても、この業務は続くか」。続くなら、あなたはモデルではなく手順とデータに依存できています。
そのうえで無料期間にやることは3つ。よく回す1業務を試す。その指示文を手順書1枚に残す。7月19日以降のコストを先に見積もる。歓迎して使う。でも、全部は預けない。
この論考の続き(競争の力学、従量課金の行方、業務の3層設計と具体例)は、サイトに全文を載せています。よろしければどうぞ。 https://claudelab.jp/articles/col-007
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