社長1人で新規事業を立ち上げる手順|Claude Codeで2週間「売れるか」を検証する
新規事業の相談を受けていて、ほぼ全員が同じ場所でつまずく。作ってから売れるかどうか考えている、という場所だ。
半年かけて開発会社に300万円払い、できあがったプロダクトを並べてから「さて、誰に売ろうか」と腕を組む。これは新規事業ではなく、ただの賭けだ。賭けに勝てるのは、最初から運がある一握りの人だけで、残りはほぼ全員が損切りすらできずに塩漬けになっていく。
この記事で書きたいのは、その逆の順番だ。作る前に「売れるかどうか」だけを2週間で確かめる手順を、社長1人で実行できる形にまとめた。エンジニアは雇わない。開発会社にも頼まない。社長と、Claude Codeと、2週間のカレンダーがあればいい。
対象は、中小企業の社長、個人事業主、フリーランス。プログラミングの経験はゼロでも進められるように書く。
この記事の前提

読者として想定しているのは、本業を持ちながら新規事業の種を探している社長だ。10人〜100人規模の会社を経営していて、本業は黒字。けれど5年後、10年後を考えたとき、今の主力商品だけで戦い続けるのは厳しいと感じている。新しい柱が欲しい。けれど、社内に新規事業の人材はいない。外部の開発会社に頼めば数百万円。失敗したら経営にも響く。
そういう状況で、社長自身が手を動かして「これは行ける」「これは違う」を見極めるための2週間が、この記事のテーマだ。
スタンスをはっきりさせておく。2週間でやるのは、新規事業を立ち上げることではない。新規事業の「種が本当に売れるか」を検証することだ。種が売れると確信できたら、その後に半年かけて本格的に作ればいい。逆に、2週間で「これは売れない」と分かれば、半年と数百万円を節約できたことになる。
もうひとつ。この記事は技術記事ではない。コードは一行も出てこない。Claude Codeは「社長の指示通りに動くアシスタント」として登場する。社長は日本語で指示を出すだけだ。
2週間で検証する3つの問い
2週間で答えを出すべき問いは、たった3つだ。これ以外のことは、今は考えない。
問1. 本当に困っている人が存在するか。これは「あったら便利」レベルの困りごとではない。お金を払ってでも今すぐ解決したい困りごとがあるかどうか、という問いだ。
問2. その困りごとに、自社が解決策を提供できるか。提供できる、というのは技術的に可能かという話ではない。社長自身が、その業界・その顧客に対して、説得力を持って提案できるか、という話だ。
問3. お金を払ってでも欲しい価格帯はいくらか。月1,000円なのか、月10,000円なのか、月100,000円なのか。価格帯が違えば、ビジネスモデルがまるごと変わる。
この3つに答えが出れば、新規事業の種としての検証は終わりだ。出なければ、その種は捨てて、次に行く。2週間というのは、種を捨てる勇気を持つための時間でもある。
14日間の全体像

具体的な日割りに入る前に、全体像を示す。社長業の合間で進める前提だから、1日に確保するのは平均2〜3時間でいい。土日にまとめて取れるなら、平日は1時間でも回る。
Day 1-3 は「誰の、どんな困りごとを解くのか」を決める。ここに3日もかける、と聞いて違和感を持つ社長もいるかもしれないが、ここを雑にやると残り11日が全部無駄になる。
Day 4-7 は「作る前に売れるかを試す」フェーズ。プロダクトを作らずに、ランディングページ(サービスを1枚で説明するページ)だけで、興味を持つ人が現れるかを測る。
Day 8-11 は最小MVP(最小限の動くもの)を作る。ここで初めてClaude Codeに本格的にコードを書かせる。社長は日本語で「こういうものを作って」と指示を出すだけだ。
Day 12-13 は最初の顧客3人に売る。無料ではなく、必ずお金を取る。1人でも払えば、種は生きている。
Day 14 は判断の日。続けるか、撤退するか、ピボット(方向転換)するか。社長1人で判断する。
以下、フェーズごとに具体的な手順を書いていく。
Day 1-3: 困りごとを30個出して1つに絞る
新規事業のアイデアは、ひらめきから生まれるのではない。観察と対話の積み重ねから生まれる。Day 1-3 でやるのは、社長自身の中にある「うっすら気になっていること」を言語化し、絞り込む作業だ。
Day 1: 自社と顧客の「うっすら困っていること」を30個書き出す
ノートを開く。本業の取引先、顧客、自社の従業員が「うっすら困っているなあ」と感じていることを30個書き出す。30個は多いと感じるかもしれないが、20個までは誰でも出せて、そこから先の10個に本当のヒントが眠っている。
書き方のコツは、**「業界名 × 職種名 × 具体的な作業」**で書くことだ。「請求書管理が大変」ではなく、「従業員30人規模の建設会社の経理担当が、月末に協力会社20社分の請求書を手で照合するのに丸2日かかる」と書く。ここまで具体的に書けると、もう半分検証が終わったようなものだ。
社長自身が見聞きしたことがあるリアルな困りごとを書く。ニュースやSNSで見たものではなく、顔が浮かぶ困りごとだけを書く。これが最初の鉄則だ。
Day 2: Claude Code に「誰がいくら払いそうか」を一気に整理させる
30個書き出したリストを、Claude Code に渡す。指示は単純でいい。
「以下の30個の困りごとリストを、それぞれについて『誰が困っているか』『その人が月いくらまで払いそうか』『なぜその金額か』を表にしてください」と日本語で頼めば、Claude Code は数分で整理した表を返してくる。
ここで重要なのは、Claude Code の答えを鵜呑みにしないことだ。Claude Code は社長の業界を社長ほど知らない。だから、表を見ながら社長自身が「これは違う」「これは現実的」と一行ずつ判断していく。Claude Code は計算機ではなく、壁打ち相手として使う。
表ができたら、月額1万円以上を払いそうな困りごとだけを残す。月数百円のものは、今回は捨てる。少数の顧客から相応の金額をもらうビジネスのほうが、社長1人で回す新規事業には向いている。安いものを大量に売るには、マーケティングと人手が要る。これは社長1人では持続できない。
Day 3: 1つに絞る
残った5〜10個の候補から、1つに絞る。絞り方の基準は3つだ。
- 社長自身が顧客の顔を3人以上即座に思い浮かべられること
- 既存の取引先や知人にヒアリングできる人が3人以上いること
- 月額1万円以上を払う説明が、社長自身の言葉で1分以内にできること
3つすべてを満たすものが、Day 3 の終わりに残っているはずだ。残っていなければ、Day 1 に戻ってもう一度書き出す。ここで妥協すると、残り11日が全部空回りする。
Day 4-7: スモークテストLPで需要を測る
ここからが、社長1人新規事業の真骨頂だ。プロダクトを作らずに、需要だけを先に測る。これをスモークテスト(試しに煙を上げて反応を見る、の意)と呼ぶ。
Day 4: ランディングページの中身をClaudeに書かせる
Day 3 で絞った1つの困りごとに対して、解決策を提示するランディングページ(以下、LP)を作る。LPの構成は、昔から効果が実証されている型をそのまま使う。
見出し、サブ見出し、ビフォー/アフター、3つの価値、料金、申し込みフォーム。これだけだ。
Claude Code に「次のような新規事業のLP文章を書いてください」と指示する。指示の中には、Day 3 で決めたペルソナ(具体的な顧客像)、解決する困りごと、想定価格、社長の業界での実績を入れる。10分で初稿が出てくる。
初稿を、社長の言葉に書き換える。ここを丸投げしないことが大事だ。Claude Code の文章は整っているが、業界特有の温度感が抜けていることが多い。社長が肌で知っている言い回し、顧客が実際に使う言葉に書き換えていく。
Day 5: LPを公開する
LPを公開する場所は、無料で十分だ。STUDIO、ペライチ、Wix、どれでもいい。1日で公開できるサービスを選ぶ。ドメイン(独自URL)も要らない。仮のURLで構わない。検証段階で、見た目を整えることに時間を使ってはいけない。
LPの最後に、申し込みフォームを置く。ここに「事前登録」「無料相談」「詳しく聞きたい」など、行動を起こすボタンを1つだけ置く。ボタンを2つ以上置くと、コンバージョン率(反応する人の割合)は半分以下に落ちる。これは無数の検証で実証されている事実だ。
Day 6-7: 知人と既存顧客に「これ、どう思う?」と聞いて回る
LPができたら、まずは知人と既存顧客にURLを送る。広告は打たない。検証段階で広告を打つのは、答えを買っているだけで、答えを聞いていないことになる。
送るときの文面は、Claude Code に書かせてもいい。だが、必ず最後は社長自身が「〇〇さんのところで、こういう困りごとってありませんか」と一言を添える。人は商品ではなく人から買う。社長の名前で送られてきた相談メッセージのほうが、無記名のLPより10倍効く。
このフェーズの判定基準は明確だ。LPを見た人のうち、3人以上が「もっと詳しく聞きたい」と返してきたら、需要は存在する。1人以下なら、種を捨てるか、Day 1 に戻ってやり直す。
ここで撤退する勇気を持てる社長は、強い社長だ。多くの社長は、ここで「もう少し説明したら分かってくれるはずだ」と言って、結局誰にも刺さらない説明を半年続ける。これが新規事業の典型的な失敗パターンだ。
Day 8-11: 最小MVPをClaude Codeで作る
需要が確認できたら、初めて作る段階に入る。ただし、ここでもまだ作りすぎない。
Day 8: 機能を3つに絞る
Day 4-7 で話を聞いた人たちが、口を揃えて「これだけは欲しい」と言った機能を3つに絞る。4つ目以降は今回作らない。社長自身が「あったほうがいい」と思うものも入れない。
3つの絞り込みは、必ず**「これがなければサービスとして成立しない機能」**という基準で行う。便利機能ではなく、必須機能だけを残す。
Day 9-10: Claude Code に2日で作らせる
ここでClaude Code を本格的に使う。社長は日本語で指示を出すだけでいい。
「Day 8 で決めた3つの機能を持つ、ブラウザで動くサービスを作ってください。データはSupabaseに保存します。ユーザー認証は不要、URLを知っている人だけが使えればいい状態でお願いします」と指示する。
Claude Code はファイルを次々と作っていく。エラーが出たら、画面に出ているエラーメッセージをそのまま Claude Code に貼り付ける。「このエラーが出ました、直してください」と頼むだけだ。
ここで社長が学ぶべきは、コードを読むことではなく、Claude Code への指示の出し方だ。「うまく動かない」では、Claude Code は直せない。「ボタンを押しても画面が変わらない、開発者ツールの Console タブに〇〇というエラーが出ている」と具体的に伝えると、Claude Code は確実に直す。
この「Claude Code への指示の精度」が、社長1人新規事業の生産性を決める。最初のうちは1日かかった作業が、慣れてくると1時間で終わるようになる。
Day 11: 動くものを社長自身でテストする
4日目までの作業で、最低限動くものができているはずだ。Day 11 は、それを社長自身が顧客になったつもりで触る日だ。
触っていて引っかかった場所をメモしていく。バグは直さなくていい。「ここで迷った」「ここで意味が分からなかった」というメモだけを残す。本物の顧客は、社長以上に容赦なく引っかかる。Day 12 の前に、わかりきった引っかかりは潰しておく。
Day 12-13: 最初の3人に売る
ここが最大の山場だ。作っただけでは検証は終わらない。お金が振り込まれて初めて、種は本物になる。
Day 12: Day 6-7 で「詳しく聞きたい」と返した人に売る
Day 6-7 で反応してくれた人に、もう一度連絡する。「ご相談いただいた件、簡易版のサービスが動く形になりました。月額〇〇円で、最初の1ヶ月から使えます。お試しいただけませんか」と直球で売る。
値引きはしない。「お試し価格」「ローンチ記念」みたいな言い訳もしない。最初に値引きで売ると、値引きでしか売れない癖がつく。これは新規事業で最も致命的な癖だ。
値段に納得して払う人がいなければ、その種は本物の需要ではなかったということだ。検証は失敗、で構わない。失敗を確認するための2週間だったとも言える。
Day 13: 払ってくれた人の声を全部録音する
運良く1人でも払ってくれたら、その人と最低30分の電話か対面の時間を取る。今後そのサービスに何を求めるかを、徹底的に聞く。録音しながら聞いて、後でClaude Code に文字起こしの要約をさせる。
この30分が、本格的に作る段階での設計図になる。社長の想像で作るのではなく、お金を払った1人が言ったことで作る。払った1人の声は、払っていない100人の声より重い。これも新規事業の鉄則だ。
Day 14: 続けるか、撤退するか

14日目は、判断の日だ。手を動かさない。1日かけて、これまでの14日間のメモを見直す。
続ける判断ができるのは、3つの条件が揃ったときだ。3人以上が、月額1万円以上で、自分の意志で払った。これが定量的な基準。加えて、社長自身がこの事業を3年やる覚悟が、Day 1 のときより強くなっていること。これが定性的な基準だ。
撤退の判断は、早ければ早いほど経営にダメージが少ない。Day 14 で撤退できる社長は、Day 90 で撤退する社長より、10倍経営者として優秀だ。これは精神論ではなく、単純な算数の話だ。Day 14 で撤退すれば、失ったのは2週間と、Claude Code の利用料1〜2万円程度。Day 90 まで続けて撤退すると、失ったのは3ヶ月と、外注費数百万円になる。
中小企業社長が陥りやすい3つの罠
2週間の検証を、社長が自分で実行するときに、ほぼ全員がはまる罠が3つある。
罠1: 「これは作れば売れる」と確信して、Day 4-7 を飛ばす。これが圧倒的に多い。社長は業界のことを知り尽くしているから、「自分が分かるなら他の社長も分かるはずだ」と思い込む。だが、社長自身が払うかどうかと、他の社長が払うかどうかは、別の話だ。自分への確信が強いほど、検証を飛ばす誘惑が強くなる。これは経験豊富な社長ほど陥りやすい罠だ。
罠2: Day 8-11 で「ついでに」機能を増やす。1つ作れば、欲が出る。「もう1個入れたほうが完璧」「これも入れないとプロっぽくない」。プロっぽさは、Day 14 までは不要だ。最低限の機能で売れたものは、その後の拡張で必ず売れる。最低限で売れなかったものは、何を足しても売れない。
罠3: Day 12 で値引きする。「初めての顧客だから値引きしよう」「お試しでまずは半額で」。これは検証ではなく、検証を回避している。お金が惜しいから値引きするのではない。正規価格で売れるかどうかを確かめるのが Day 12 の目的だ。値引きで売ったデータは、検証データとして使えない。
この3つの罠を意識しているだけで、2週間の精度は2倍上がる。
Claude Code を「社員1人」と考える
2週間の検証で、Claude Code は文字通り社員1人分の働きをする。試しに役割を分解してみよう。
- リサーチ担当: Day 2 の困りごと整理、Day 7 の競合調査、Day 13 の顧客インタビュー要約
- コピーライター担当: Day 4 のLP文章、Day 12 の営業メッセージ
- エンジニア担当: Day 9-10 のMVP実装、Day 11 のバグ修正
- アナリスト担当: Day 14 の判断材料の整理
これを正社員で雇えば、月100万円以上のコストになる。Claude Code は、月1〜2万円で同等の働きを24時間する。中小企業の社長にとって、これは資金繰りの面でもうれしい話だ。
ただし、社員と違って、Claude Code は社長の業界を知らない。社長が自分の言葉で具体的に指示を出さなければ、的外れな答えしか返ってこない。社員教育と同じで、最初の1ヶ月は指示の出し方を試行錯誤する期間が必要だ。慣れれば、社員1人を雇うより圧倒的に速く動かせるようになる。
明日からやる3つのこと
最後に、この記事を読んだ社長が明日から始められる3つのことを書く。
ひとつ。カレンダーに14日間を確保する。これが最も難しいが、これができなければ何も始まらない。本業の重要な予定はそのままでいい。1日2〜3時間の枠を、14日連続で押さえる。社員に「来週から2週間、午後の特定の時間は新規事業の検証に使う」と宣言する。宣言することで、逃げ場をなくす。
ふたつ。自社の取引先と従業員が「うっすら困っていること」を、明日の朝、ノートに10個書き出す。30個は無理でも、10個なら今すぐ書ける。書きながら、3人の顔が浮かぶものを丸で囲んでおく。それが、社長が2週間で検証すべき種の候補だ。
みっつ。まだ触っていないなら、Claude Code を今夜インストールする。インストールして、何でもいいから日本語で1つ指示を出してみる。「私の会社の業界の最近のトレンドを5つ教えてください」でいい。Claude Code と日本語で会話できるという感覚を、本番が始まる前に体験しておく。
新規事業は、ひらめきではない。観察と検証の積み重ねだ。半年かけて壮大な計画を立てる時代は、本当の意味で終わった。2週間で答えを出す社長と、半年かけて答えを出せない社長の差は、年を追うごとに開いていく。
この2週間が、御社の5年後の主力商品の出発点になる可能性は十分にある。検証して、ダメなら捨てる。それを繰り返すうちに、必ず本物の種に当たる。動いた社長から、次の主力が生まれる。
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