「経理の仕事は地味だけど、なくなることはない。でも毎月同じ作業に追われるのは正直しんどい」
これは、AI研修を受ける前にある経理担当者が口にした言葉です。月末になるとデスクから動けなくなる日々。残業続きの月次決算。エクセルの数字を何度も確認する単調な作業——経理部門ならではの悩みです。
この記事では、従業員30名の製造業A社の経理部門(3名体制)がAI研修を受け、3ヶ月で月40時間の業務削減に成功した事例を紹介します。会社名や個人名は匿名ですが、数字と方法はすべて実際のデータに基づいています。
A社の経理部門:研修前の状況
A社は大阪にある従業員30名の製造業です。経理部門は3名体制で、経理課長(50代)、主任(30代)、スタッフ(20代)の構成です。
毎月の主な業務と所要時間
研修前の月間業務時間を計測したところ、以下の結果でした。
| 業務 | 月間所要時間 | 担当者 |
|---|---|---|
| 仕訳入力と確認 | 25時間 | スタッフ |
| 経費精算のチェック | 15時間 | 主任 |
| 月次決算レポート作成 | 20時間 | 課長・主任 |
| 予実管理表の作成・更新 | 12時間 | 課長 |
| 取引先への請求書発行 | 8時間 | スタッフ |
| 銀行残高の照合 | 5時間 | スタッフ |
| 社内向け経費報告 | 6時間 | 主任 |
| その他(問い合わせ対応等) | 10時間 | 全員 |
| 合計 | 約101時間/月 |
3名合計で月101時間。1人あたり月33時間以上が定型的な事務作業に費やされている計算です。特に月末から翌月5日までの月次決算期間は、毎月残業が発生していました。
経理部門が抱えていた3つの課題
- 月次決算に3日かかる: 仕訳の確認、数字の突合、レポート作成を手作業で行っており、毎月3営業日を要していた
- 経費精算のチェックが属人化: 主任が1件ずつ目視でチェックしており、主任が休むと処理が滞る
- 予実管理表の更新が遅い: 月次決算が終わらないと予実管理表が更新できず、経営判断に必要な数字が常に1ヶ月遅れていた
3ヶ月の研修カリキュラム
研修は3ヶ月間、段階的に実施しました。各月のテーマと内容は以下の通りです。
1ヶ月目:AIの基礎と日常業務への適用
目標: AIチャットツールの基本操作を習得し、日常の文章作成業務で活用できるようになる
研修内容(Off-JT 2日間+OJT 2週間):
- AIチャットツールとは何か(概要説明、30分)
- 基本的な使い方と指示の出し方(プロンプトの書き方、2時間)
- メール文面の作成・修正の実習(1時間)
- 社内報告書のドラフト作成実習(1時間)
- 経理用語・社内ルールをAIに伝える方法(1.5時間)
- OJT期間:日常のメール・報告書作成でAIを活用する(2週間)
1ヶ月目の成果: 3名全員が、メール文面の作成と社内報告書のドラフト作成にAIを使えるようになりました。この段階だけで、月6時間程度の削減を実感できたとのことです。「最初は半信半疑だったけど、メールが5分で書けるようになって驚いた」(スタッフ)。
2ヶ月目:経理特化のプロンプト習得
目標: 経理業務に特化した指示の出し方を習得し、仕訳確認・経費チェック・レポート作成でAIを活用できるようになる
研修内容(Off-JT 2日間+OJT 2週間):
- 経理データの整理・分析にAIを使う方法(2時間)
- 仕訳パターンの確認補助の実習(1.5時間)
- 経費精算チェックの効率化実習(1.5時間)
- 月次レポートの構成自動生成実習(2時間)
- 予実管理のコメント自動作成実習(1.5時間)
- OJT期間:実際の月次決算でAIを活用する(2週間)
2ヶ月目で使った経理特化プロンプトの例:
経費精算チェック用の指示例として、以下のような使い方を練習しました。
「以下の経費精算データを確認してください。確認のポイントは、(1)日付が出張期間内かどうか、(2)金額が社内規定の上限以内かどうか、(3)領収書の宛名が会社名になっているかどうか、(4)勘定科目が適切かどうか。問題がある項目にはその理由を付けてリストアップしてください。」
月次レポートのドラフト生成用の指示例として、次のような使い方も練習しました。
「今月の売上は○○万円(前月比+○%、予算比+○%)、営業利益は○○万円(前月比○%、予算比○%)です。この数字をもとに、経営会議向けの月次財務レポートのドラフトを作成してください。特筆すべき変動がある項目については、考えられる要因を2〜3点挙げてください。」
2ヶ月目の成果: 月次決算にかかる時間が3日から1.5日に短縮されました。経費精算のチェックも、AIが事前にフラグを立ててくれるため、主任が全件チェックする必要がなくなり、月15時間の業務が8時間に削減されました。
3ヶ月目:業務フローの再設計と定着
目標: AI活用を前提とした新しい業務フローを確立し、チーム全体の運用として定着させる
研修内容(Off-JT 1日+OJT 3週間):
- 現行業務フローの見直しワークショップ(3時間)
- AI活用を前提とした新業務フローの設計(2時間)
- チーム内でのベストプラクティス共有(1.5時間)
- OJT期間:新フローでの運用開始と微調整(3週間)
3ヶ月目のポイントは、「AIを個人で使う」から「チームの業務フローに組み込む」への転換です。たとえば、経費精算のフローを以下のように変更しました。
従来のフロー: 社員が経費精算を提出 → 主任が全件を目視チェック → 問題があれば差し戻し → 主任が承認 → 課長が最終承認
新しいフロー: 社員が経費精算を提出 → AIが自動チェック(規定違反を検出) → 主任はAIが指摘した項目のみ確認 → 主任が承認 → 課長が最終承認
3ヶ月目の成果: 新フローが定着し、チーム全体で月40時間の削減を達成しました。
研修前後の比較:数字で見る変化
3ヶ月の研修を経た後、各業務の所要時間は以下のように変化しました。
| 業務 | 研修前 | 研修後 | 削減時間 | 削減率 |
|---|---|---|---|---|
| 仕訳入力と確認 | 25時間 | 15時間 | 10時間 | 40% |
| 経費精算のチェック | 15時間 | 8時間 | 7時間 | 47% |
| 月次決算レポート作成 | 20時間 | 8時間 | 12時間 | 60% |
| 予実管理表の作成 | 12時間 | 5時間 | 7時間 | 58% |
| 請求書発行 | 8時間 | 6時間 | 2時間 | 25% |
| 銀行残高の照合 | 5時間 | 4時間 | 1時間 | 20% |
| 社内向け経費報告 | 6時間 | 3時間 | 3時間 | 50% |
| 合計 | 91時間 | 49時間 | 42時間 | 46% |
注:「その他」の10時間は研修対象外のため除外しています。
月間42時間の削減は、約1人分の業務量の半分に相当します。 3名体制のままで、以前より格段に余裕を持って業務をこなせるようになりました。
特に効果が大きかった業務
月次決算レポート作成(60%削減): 数字の入力後、レポートの構成とコメントのドラフトをAIが自動生成。課長は数字の確認と微修正のみに集中できるようになりました。
予実管理表の作成(58%削減): 実績データを貼り付けるだけで、予算との差異分析コメントが自動生成されるようになりました。「月次決算が終わった翌日には予実管理表が完成しているのは、以前では考えられなかった」(課長)。
ROI計算:投資は2ヶ月で回収
A社のAI研修の費用対効果を計算します。
投資コスト
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 外部研修費用(3名分) | 240,000円 |
| テキスト代(3名分) | 9,000円 |
| 研修中の機会損失(5日分×3名) | 225,000円 |
| AIツール月額利用料(3名×3ヶ月) | 27,000円 |
| 合計 | 501,000円 |
助成金を活用した場合
- 経費助成(75%):249,000円 × 75% = 186,750円
- OJT賃金助成:960円 × 30時間 × 3名 = 86,400円
- 助成金合計:273,150円
- 実質負担:227,850円
年間の効果
- 月間削減時間:42時間
- 時給換算(3,000円):月126,000円
- 年間効果:1,512,000円
ROI
- 助成金なし:ROI = (151万円 − 50万円)÷ 50万円 × 100 = 202%
- 助成金あり:ROI = (151万円 − 23万円)÷ 23万円 × 100 = 557%
助成金なしでも約4ヶ月、助成金ありなら約2ヶ月で投資を回収できました。
経理部門のAI研修を成功させる5つのポイント
A社の事例から見えてきた、経理部門のAI研修を成功させるためのポイントをまとめます。
1. 月次決算の前に研修を完了させる
研修で学んだことを実際の月次決算で試せるスケジュールにすることが重要です。A社では、2ヶ月目の研修を月次決算の直前に実施し、OJT期間にそのまま月次決算に臨みました。「学んだその日に試せる」ことが定着の決め手でした。
2. 最初は簡単な業務から始める
仕訳入力や決算業務のような重要度の高い業務にいきなりAIを使うのは、心理的なハードルが高いです。A社ではまず1ヶ月目にメールや報告書の作成から始め、AIの精度に信頼を持てるようになってから、経理の核心業務に移行しました。
3. 「AIの出力は必ず人間が確認する」ルールを徹底する
AIは間違えることがあります。特に数字を扱う経理業務では、AIの出力をそのまま使わず、必ず人間がチェックするルールを設けることが不可欠です。A社では「AIはドラフト作成と候補の提示まで、最終判断は必ず人間」というルールを全員で共有しています。
4. 部門の「辞書」を作る
A社では、自社固有の勘定科目名、取引先の略称、社内ルールをまとめた「経理部門の辞書ファイル」を作成しました。AIに指示を出す際にこの辞書を参照させることで、毎回同じ説明をしなくても正確な出力が得られるようになりました。
5. 効果を数字で記録する
「何となく楽になった」ではなく、具体的な時間で効果を記録することが、継続のモチベーションになります。A社では毎月の業務時間を記録し、削減時間をグラフ化して経営会議で報告しています。これが経営層からの継続的な支援にもつながっています。
削減した時間で何ができるようになったか
月42時間の削減によって生まれた時間を、A社の経理部門は以下のように活用しています。
- 経営分析の深掘り: これまで時間がなくてできなかった、セグメント別の利益分析やキャッシュフロー予測に取り組めるようになった
- 部門間のコミュニケーション: 営業部門との予算ミーティングに毎週参加し、リアルタイムで数字の共有ができるようになった
- スキルアップ: 管理会計や財務分析の勉強会を月1回開催している
「定型作業から解放されたことで、初めて『考える経理』ができるようになった」——課長のこの言葉が、AI研修の本質的な価値を表しています。
まとめ
A社の事例は、経理部門のAI研修が「コスト」ではなく「投資」であることを明確に示しています。
- 3名体制で月42時間の削減
- 月次決算は3日から1日に短縮
- 投資回収は助成金活用で約2ヶ月
同じような成果を出すために、特別な技術力は必要ありません。必要なのは、段階的な研修プログラムと、実務に直結したカリキュラムです。
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